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7.悪意の犠牲 ~義足リハビリセンターにて~

2002.07.07アフガニスタン

動乱の余韻が消えないアフガニスタン。この国では置き去りにされた悪意が今でも人々に牙を剥く。私はその現実にここで直面しました――。
アフガニスタンに残された対人用地雷は1000万個以上。その数は世界中の紛争地域の中で最も多いのです。
対人用地雷の目的は殺人ではありません。相手を傷つけ、戦う意欲を奪うため、敵の恐怖を身体に刻み付けるため、ただそれだけのために生まれた卑劣な兵器・・・・・。
次に訪ねたのは、国際赤十字が支援している“義足リハビリセンター”。ここは戦火で傷ついた人のために義足を作り、歩行訓練などを施すために誕生した施設です。毎日200人もの人々がここに運び込まれ、治療を受けています。そのほとんどが地雷の被害者で、兵士よりも一般の市民の方が圧倒的に多いのです。
旧ソ連軍が仕掛けていったものや、度重なる民族紛争の中で埋められたものだけでなく、自分たちの村を敵の侵略から守るために同胞が残した地雷によって傷つけられることも少なくないとのことでした。
ベッドには多くの足のない患者が並んでいました。
「彼らはこれから採寸して自分に合う義足を発注するんだ」と、そこで働くドクターが言いました。テレビでしか知らなかった光景に愕然とする私に、彼は「本当の足より軽いよ。持ってみなさい」と腰に巻いて使う義足を私に手渡しました。
重い・・・・!
持ってみるとかなりの重みが感じられました。犠牲者たちはこれを身体につけて生活していかなければいけないのです。ドクターの本物の足より軽いという言葉に、本物の足が自分の身体を離れた時の重量を感じた事がない私は、何ともコメントができなかったのでした。足を失った人にしか、この重みはわからないのでしょう。そのドクターの片足もまた、義足でした。
そこで働くスタッフのほとんどが義足を使っていました。
「どうしてここで働くようになったのですか?」とスタッフの一人に尋ねると、「足を失い、悲しみのどん底にいる時に、ここで義足をつけてもらったんだ。歩けるようになって希望が持てたよ。だからここで働いて、僕が助けてもらったように、多くの地雷の犠牲者を救いたいんだ」と、笑顔で答えてくれました。
地雷の被害者は大人だけではありません。
リハビリに励む、片方の足が義足の3歳の少年に出会いました。
「足がどれかと聞くと、義足ではない方の足を見せるんです」と、少年の母親は私に言いました。身につけた義足がいったい何なのか、まだ飲み込めていないのです。
「足は痛む?」と聞く私をつぶらな瞳で見上げるのですが、その子は何も答えません。
再び母親が言いました。
「夜になると毎日泣くの。痛いって・・・・・」
少年はもう野原を駆け回ることさえできない・・・・・。そう思うと、言葉が見つかりませんでした。
突然、ニルファが耐え切れず、その場所を立ち去りました。私は彼女のあとを追いかけました。
「子供は辛いことを忘れようとしている。私も足を撃たれた時のことは思い出したくない。子供の話を聞いてるうちに自分と重なって・・・・・。ごめんなさい」
ニルファは幼い頃に受けた深い恐怖をよみがえらせたのでした。彼女もまた、爆弾で足を傷つけられた戦争の犠牲者だったのです。
「苦しいことを忘れたい子供の気持ちが痛いほどわかるの。すべて戦争のせいなんです・・・・・」
彼女は目を潤ませながらそう言ったのでした。

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